渋治の書庫

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メンテ中

小鳥


  小鳥
 
小鳥とゆう名の
小鳥がおりました

小鳥とゆう名は
このおうちの
ぼっちゃんが
おつけになりました

小鳥という名の小鳥に
親はおりません
小鳥とゆう名の
小鳥の親は
とうのむかしに
死にました
 
 
とうのむかしの
ことですから
小鳥とゆう名の
小鳥は
なにもおぼえちゃ
おりません

あちらの
ヒヨドリ
そちらの
キビタキ
なにか
いったからとて
哀しくもありませんし
ましてや
にんげんさんで
いらっしゃる
ぼっちゃんに
小鳥と呼ばれても
ちっともひがんじゃ
おりません
 
 
 
それよりも
あのヒヨドリ
口にある赤い実は
どこにあるのか
籠の脇にさっきまで
吊り下がっていた
黒紫の柚須の実を
誰が持ち去ったかで
小鳥とゆう名の
小鳥のあたまは
いっぱいでした
 
 
 
 
時折
お山の向こうの
ずっとずっと
向こうから

 ぴーひゅるり
 ぴーひゅるる

という声がしてきて
小鳥とゆう名の
小鳥は
小鳥とゆう名を
捨てたくなりましたが
すぐにぱしぱしと
水をあびて
またいつもの
小鳥となりました
 
 
 
 
それから
大きくふくらんで
ぶるっとしたあと
小鳥とゆう名の
小鳥は
いいました


 空を見上げちゃ
 おしまいさ
 小鳥という名が
 廃ります
 
 けれど
 みておきなさい
 いつまでも
 小鳥のままじゃ
 ありませんから
 いつかはあの
 黒紫の柚須の実
 のように
 すっかりいなく
 なっちまいますから
  

  それ


 ぴーひゅるり

 ぴーひゅるる