渋治の書庫

渋治の書庫

メンテ中

地団駄


私はこんな風体だったか。
私はこんな風になる為
に生まれてきたんではないはずだ。

見よ、この憐
れな姿を。

皮膚は擦り切
れ所々腫れ上がっている
ではないか。

私の顔はこんなんではなかったぞ、
私の顔はもっと面長でキリリとしていたはずだ。

あぁ、悲しいかな、これを見てくれたまえ、
私のこれが口かえ、こんなふざけた口だったかえ、
こんなダラリと呆おけたものだったかえ。

おかしいじゃないか、
おかしいさ、
夢じゃないなら尚更さ。

うんうん、この痛みは
夢でないことを教えてく
れている。


ああ、承知しているさ、分かってるさ。
寄る歳で半ば諦めてはいたんだ。
が、時折くる痛みに、
しかし最近じゃ堪えられなくなってきた。

悲しいさ、切ないさ、
辛すぎるさ・・・。

しかしこの鼻を突く臭いはなんだ。
これは余程のものだ、重傷だ。加歳臭か。
いやいやこれは、私ではない、断じて私では
ない。私を今日までこき使い無下にし放置してきた中年男のそれだ。

だのに皆は、私に向かっ
て臭い臭いとしかめっ面
を投げ、意地の悪い言葉
を吐きかけるのだ。

これが悲劇でなく何と言
わしょ。

ひとしきり泣き喚いた
革靴は、踏めない地団駄
を思いきり踏んだ。